実話だった!『関心領域』リンゴを置く少女の演出をネタバレありで考察

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関心領域リンゴのアイキャッチ画像
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『関心領域』に出てくるリンゴのシーン、映画を観ながら「この演出はどのような意味があるんだろう?」と疑問に思った方も多いはず。

タビ

筆者も最初は意味がわからず「あれ?」と思いました。

このリンゴを置く少女のシーン、なんと実話をもとにしたエピソードなんだそう!
そこで『関心領域』で出てくるリンゴのシーンについて、ネタバレありで考察いたします。

ネタバレ注意
以下は映画『関心領域』の内容に関するネタバレを含みます。
映画を鑑賞してからお読みください

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目次

リンゴの意味を考察!実話をもとにした『関心領域』該当シーンのあらすじ

キレイな家で豊かに暮らす、一見幸せそうなヘス一家。
しかし家の隣は、アウシュヴィッツ強制収容所

一家の娘は不安からか夜に眠ることができず、お父さん(ルドルフ・ヘス)に絵本を読んでもらうことに。
絵本の題材は、グリム童話の『ヘンゼルとグレーテル

ヘスが娘へ絵本を読み聞かせる声が広がるなか、映像は家の外へ。
暗闇のなかで白く光る少女が、道にリンゴを置いていきます
その後少女は自転車に乗り、ナチス軍に遭遇するのを避けながら家へ帰りました。

というのが、リンゴを置く少女の大まかなあらすじです。

タビ

筆者は最初『ヘンゼルとグレーテル』のシーンを再現しているのかな?と思ったけれど、2回目の暗闇で実際のシーンだと気づきました。

実話だった!『関心領域』リンゴを置く少女は実在する

『関心領域』は実話をもとにしたストーリーで、ルドルフ・ヘスをはじめとするキャラクターも実在する人物です。
そして作中に登場するリンゴを置く少女も実在する人物で、暗闇のシーンも実話をもとにしています

『関心領域』の監督ジョナサン・グレイザーは、本作の製作で現地取材をした際、90代のアレクサンドリアという女性に出会いました。

戦時中のアレクサンドリアの行動

  • 飢餓で苦しむ囚人のために自転車でアウシュヴィッツまで走り、リンゴを置く
  • 囚人が書いた楽譜を発見する
タビ

映画と同じ!想像しただけでハラハラする勇気のある行動!

アレクサンドリアはジョナサン・グレイザーと面会後しばらくして亡くなりましたが、彼女の勇気ある行動は『関心領域』のストーリーを膨らませる大きな役割を果たしました

実話を効果的に脚色!『関心領域』リンゴの場面が暗闇の理由をネタバレ考察

リンゴを置いたのが実話だと知ってハラハラした方も多いと思いますが、『関心領域』の該当シーンを見て緊張した方は少ないと思います。

暗闇のなかで白く光る少女の姿が異様で、緊迫感よりも違和感を抱いた方が多いのではないでしょうか?
あのシーンはサーモグラフィ・カメラで撮影しており、監督のジョナサン・グレイザーはこのように話しています。

サーモグラフィを使って撮影したシーンでは、鑑賞者が見ているのは光ではなく、熱を感知してスクリーンに映し出されたものなんですね。倫理的にもビジュアル的にもほかのシーンとは対照的なもの、というつもりで導入しました。

また、このシーンを映し出すのに、サーモグラフィがふさわしかったためでもあります。作品は1945年が舞台となっているため、すべてのシーンを自然光のみで撮りたいと思っていました。ただし、自然光で撮影するとなると夜のシーンは少女が映らないので、一つの方法としてもサーモグラフィを使いました

CINRA より引用
タビ

たしかに暗闇のシーンは、明るい光で残虐性を際立たせる演出の対照になってる!

しかし現代の技術なら、暗闇で少女の表情をキレイに見せるカメラワークもできるはず。
それをしなかった理由は、実在する人物の勇気ある行動を「人間の温かみ」として演出するためだと考察できます。

『関心領域』に出てくる登場人物のなかで、リンゴの少女は命がけで人のために行動する唯一の人物
その心の温かさを、サーモグラフィの熱で表現したと感じます。

タビ

炎が燃え広がらない暗闇の中なら、人間の体温を映し出せますね。

また表情が見えると緊張感が先立ちますが、あえてシルエットだけを映すことで、客観的に物事を見れる意味合いもあると感じました。

実話とリンク!『関心領域』リンゴの場面でヘスが読んだ絵本についてネタバレ考察

『関心領域』でヘスが娘に絵本を読んでいますが、これはグリム童話の『ヘンゼルとグレーテル』です。

『ヘンゼルとグレーテル』は、森のなかで道しるべとしてパンくずを置いていきますが、これはリンゴを置く少女の姿と重なります
そうすると魔女が住むお菓子の家は、ヘス一家が暮らすキレイな家と同じだと考察できます。

『ヘンゼルとグレーテル』では、最後にグレーテルが魔女を窯の中に押し込み、逃げ出すことに成功。
しかし『関心領域』の場合、囚人同士がリンゴを奪い合うことを想像させるセリフがあり、ホロコーストの地獄が続くことを暗示しています。

自分が魔女と同じ立場でありながら、娘に『ヘンゼルとグレーテル』を読み聞かせるヘス。
ここでも自分事として考えられない、無関心の恐ろしさを痛感しました。

タビ

絵本に出てくる悪役のような人って、実在したんですね…


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関心領域のラストの考察については、「【ネタバレ考察】『関心領域』ラストの意味は?知るとホラー映画より怖い」をご覧ください。

ネタバレ考察まとめ:リンゴを置く少女は『関心領域』唯一の希望の光

『関心領域』は、暗闇こそが希望の光として描かれています。

ヘンゼルとグレーテルのように、パンくずを撒いても食べられてしまい、道しるべを失うかもしれない。
リンゴを置いても、新たな争いの種になってしまうかもしれない。

どちらも作戦としては失敗かもしれませんが、生きるために起こした精一杯の行動を否定できません。

いざというときに抱え込まず、分け与える精神を持ちたいです。

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