『あんのこと』は、実話をベースにした映画。
最後まで観終えると、映画冒頭に出てきた一言が重く心にのしかかります。
この記事では、映画『あんのことについて、ネタバレありで解説いたします。
以下は『あんのこと』のネタバレを含みます。
映画を鑑賞してからお読みください。
結末をネタバレ解説:映画『あんのこと』の元ネタ
『あんのこと』は、2020年6月に朝日新聞に掲載された記事が元ネタです。
映画プロデューサーの國實瑞恵がこの記事に衝撃を受け、映画監督の入江悠に制作を持ちかけました。
新聞記事の元ネタの要約は、以下のとおりです。
- ハナという女性は幼少期から親からの虐待に遭っていた。
- ハナは薬物依存にも陥っていた
- 介護福祉士になることを目標に夜間中学に通うはずだったが、コロナ禍で学級閉鎖になってしまった
- 前途を絶たれたハナは2020年春に自ら命を落とした
監督の入江悠は、ハナの更生に携わっていた刑事がほかの更生者への性加害で逮捕されたことを、別の報道で知ったそうです。
この2つの事件をかけ合わせ、映画『あんのこと』が制作されました。
映画『あんのこと』結末からネタバレ考察:人間は簡単に孤立する
『あんのこと』の結末は、多々羅(演:佐藤二朗)と三隅(演:早見あかり)が、杏(演:河合優実)について話すシーンで終わります。
多々羅が話す”あんのこと”
『あんのこと』の結末で多々羅は、杏が薬を辞められたことを涙ながらに語りました。
桐野(演:稲垣吾郎)が言うように多々羅の記事が世に出なければ、杏は多々羅を頼り、命を落とさずに済んだかもしれません。
多々羅が杏を更生させたい気持ちは本物。
しかし立場を利用して犯罪を犯している点に、人間の感情の複雑さを感じます。
三隅が話す”あんのこと”
『あんのこと』の結末で三隅は、子どもの世話をしてくれた杏のことを「恩人」と言いました。
また「お墓参りに行きたい」と言っています。
しかし三隅がした行為は身勝手そのもの。
杏がおばあちゃん想いの優しい子なので、知らない子にも優しくできただけ。
子どもにとってはトラウマにもなりかねない、最低の行為です。
コロナが生んだ悲劇
結末の二人の話から、多々羅も三隅も杏に対して情があることが分かります。
しかしコロナによって杏は生きる希望を失い、自ら命を落としてしまいました。
最後に映った杏の部屋には、毎日書かれた日記やドリル、作りかけの料理やおもちゃなど、必死に生きようとした証がたくさん残っていました。
コロナさえ無ければ、多々羅が逮捕されなければ、悲劇は起きなかったかもしれません。
なにより杏の手から子どもが三隅に返され、二人に友情が芽生えていたら…とタラレバを論じてしまいます。
なにか1つでも違えば、人生が好転したかもしれない。
しかしコロナですべてが閉ざされたことを思うと、同じような状況の人が少なくない、これが今の日本だという事実が心に重くのしかかります。
映画『あんのこと』結末をネタバレ考察:まとめ
監督の入江悠は映画『あんのこと』に、コロナ禍の記録を残したいという想いも込めたそう。
“あんのこと”を通してハナさんの生きた証、しっかりと受け止めました。